和真先輩の半分不法侵入のようなそれを誤魔化すのは、実に大変だった。


物音を聞きつけた母が、僕の部屋へと駆けつけて来たのだ。


「和真先輩入って!」


「はっ……ぶっ!」


クロックスサンダルを履いたままの和真先輩をそのまま掛け布団に引っ張った僕は、平然を装い文庫本を手にする。


「エルザ、何かあったの?」


「いえ、外で猫が騒いでいたようで。今確認した所です」


梯子を確認されてしまう前に窓とカーテンを閉めて笑顔を向けると、母も信じたらしくほっとか肩をなで下ろす。


「もう時間も遅いし、冷えるわ。そろそろ寝ないと体に障るわよ」


「ええ、そうします。お休みなさい、お母さん」


内心の緊張とは裏腹に、意外と冷静に取り繕う事が出来たと思う。