鏡で確認しても、勿論その姿。


この姿を確認する度に、僕の気持ちは底なし沼に足を取られたかのように沈む。


「はぁ、また染めなきゃ」


「どうしてだい?折角綺麗な色なのに」


「綺麗なものですか。僕には合わない。この世界で住むにも、合わない」


洗面台に駆け込んだ僕を追いかけて来た父は、僕の不満げな返しにも穏やかな笑み。


「エルザはぶれないよなぁ、そこのところ」


薄い色を隠すことはない父とは正反対の僕。僕は、殆どこの敷地内から出ない父とは違う。


そんな父からはいつも、何を言っても呑気でおっとりとした返事が返ってくるし、参考になった試しも無い。


「……お父さんは、人間相手に吸血したいと思った事はありますか?」


分かってはいるが、それでも、今日の衝動を思い出して聞かずにはいられなかった。


「エルザ……そう思う人が現れたのかい?」


どうせ、いつも通りの返しなんだろうと思っていたが、父の返答は予想外に真面目で、低い唸りのようなものだった。