「エルザ、おかえり……どうしたんだい?顔色が悪いね」


「怪我を、してしまいました。パックを頂きたいのですが」


赤嶺先輩に感じたあの感情を伏せてそう答えると、僕と同じ顔の、少し年老いた風貌の父は柔らかく微笑み立ち上がる。


そして、所定の位置に保管されていた血液パックを取り出し、僕にゆるりと手渡す。


そのキャップを回してチューブ状になった口を唇で挟み込み赤い液体を飲み込むと、喉が鳴り、身体に栄養が染み渡って全身が小さく痙攣する。


次に、かぁ、と身体中が熱くなり、その帯びた熱のせいで染めていた黒色が蒸発し、量が多く癖の強い髪の毛が、従来のプラチナブロンドに戻る。いつものことだ。


父の遺伝で僕も妹も、アルビノという先天性の白皮症を持っている。


青白い日焼け止めを塗っていた肌も、その熱により本来の乳白色に戻り、僕の人間味を奪って行く。


本来の僕の見た目は、まるで人間が昔から信じる西洋のヴァンパイアのようなのだ。