そうなれない事は、僕が選んだ事だ。


僕は自らの命を引き換えに、初めて愛しいと想える相手の命を選んだのだ。


それは、僕の記憶が残る父や母、妹には余りにも酷なことなのかもしれない。


人生で初めて家族へした反抗は、彼等への絶望。僕は、世界で一番の親不孝者なのかもしれない。それでも、運命を受け入れる気持ちは揺るがないだろう。


「エルザは素敵な男になったね。そういう顔になった。……エルザを変えた女性は、さぞ素敵な人なのだろう」


穏やかな、何も言わない父の笑顔はやけに疲れているように見える。


「ええ。とびっきり不器用で、真っ直ぐで、触れたら焦がされてしまいそうな程、眩しい人です」


この父を悲しませても守りたいあの人は、僕の気持ちを揺るがせないくらいに素敵な人なのだ。


胸を張って両親や妹に彼女を紹介出来ない事が、とてつもなく苦しいよ。