怖かったんだ。認めたら、僕は化け物になってしまうんじゃないかと思っていた。


現に、認めてしまったらもっと彼女が愛おしくて、食べたいという衝動が強くなる。


僕の中の君は、ずっと彼女を愛してると叫んでいたんだ。気付かないふりをしていて、ごめんね。


僕は僕の中にいる君を認めるよ。でも、君を受け入れる事は出来ない。


腕の力を少し緩めると、和真先輩が涙をいっぱいに溜めた瞳で僕を見上げた。


「私も君を愛してる。あいつを亡くしたあの日から、もう誰も好きにならないと思ってたけど、きっと、初めて君を見つけた日から、君を愛している」


この人を食べようとしている君と共に、僕は運命に従って朽ち果てよう。


そっと彼女の後頭部へと掌を宛てがい顔を引き寄せ、彼女の唇を奪う。


それは決意と、涙と、愛おしさで不思議と甘くしょっぱい味で溢れていた。