後夜祭もフィナーレを迎えようとしているグラウンドに降り立つと、こんな夜空の下でも、彼女がどこにいるのか直ぐ分かった。


「和真……先輩!」


友人だろうか、女子生徒と話す学ラン姿のその小さな背中に必死に彼女の名を叫ぶ。


彼女の耳にちゃんと届いたらしい僕の声。その声に反応し振り返った彼女は、少し驚いた顔をしているように見えた。


「君……!いたのか。姿が見えないから、帰ったとばかり思ってたよ。ということは、聞かれてたのか。恥ずかしいな」


恥ずかしいというのは、さっきの挨拶の事を指しているのだろう。


その言葉で、僕の自惚れかもしれないという想いも確信へと変わる。


「なぁエル……!?」


気恥ずかしそうに笑う和真先輩は、きっと明るい場所で見たら頬を赤く染めているのが分かるだろう。それが見れないのが残念でならない。


彼女が照れて早口になっているのを遮った。遮って、その今にも折れてしまいそうな細い体を腕の中へ閉じ込めた。


想いが溢れる。それを止める術を、僕は持っていない。


「愛してる。……貴女を、どうしようも無いくらい、愛してる」


言葉にしたら、さっき何とか止めた涙がまた、想いと共に溢れそう。