赤い薔薇がアーチを造る庭園のある、アイボリーを基調とした洋館。ここが、僕が住む家だ。
二階建てだが大きな家と、その他に小さな庭園、別館のある家は、所謂金持ちな方、だと思う。
別館はバイオリン職人である父が使用していることが多く、普段はあまり立ち入らない。
僕が十二歳の頃まではイタリアで工房を開いていたが、他のヴァンパイアと上手く行かなくなったのをきっかけに、母の祖国、日本へ移住した。
母はヴァンパイアを支える財団法人に勤める職員で、彼女自体にはヴァンパイアの血は流れていない。
遺伝子の上で優勢なヴァンパイアの血を受け継いだ僕と妹と、四人でこの地で過ごしているのだ。
僕は内装まで柔らかなアイボリー色に包まれた室内へ足を踏み入れると、珍しくリビングでタバコのパイプを加えた、僕と同じ肌の色の父と遭遇する。


