保健室に駆け込んだ僕は、保険医すらいなくなっているその部屋で消毒液とガーゼで乱暴な応急措置を施す。
その姿を写す鏡には、色が白く、眼鏡越しにも分かる赤い眼を持った『化け物』の顔がしっかりと写っていた。
「血を流してしまった……今日は、パックを貰おう」
そんな自分の姿から目を逸らし、深い深呼吸をしたが、赤嶺先輩の心配そうに覗く整った顔を思い出すとまた、心臓が音をあげる。
今まで生きてきて、怪我をしたことが無いわけではないし、流血を見たことを無いわけでもない。
しかしその時、少し興奮して血を求めることはあっても、目の前の人間を美味しそうだなんて思うことはなかったのに。
「僕は……人間だ。普通の人間とは違うとしても、人間なんだ。化け物じゃない」
そう呟いた僕の声は情けなくて、声が変わっても低くはならなかったそれは、嫌に震えていた。


