【完】ヴァンパイア、かなし

寝覚めは、最悪だった。


もう十月に入って二週目だというのに、寝間着は汗でじっとりと湿って、伸び始めた髪が顔にぺっとり貼り付いている。


きっと、荘司先輩が昨日変な事を聞いてきたからこんな夢を見たのだ。そうでなきゃ、有り得ない。


暗闇に浮かんだあの赤。僕は、他人にああいう風に見えているのだろうか。


怖い。あんな物は、正く化け物。僕はあんな物とは違う。あれは夢でしかない。


首を横に振るい、その寝覚めの悪い悪夢を振り払い、僕は寝間着を脱ぐ。


もう、ミミズ腫れは腕全体から広がり、上半身にまで進んでいる。


あんな夢を見るのは、僕にタイムリミットがそう遠くないからかもしれない。


それでも、僕が虚勢を張り続けられるまでは、日だまりの中で笑っていたい。僕の願いは、それだけだ。


だから、僕は制服に袖を通り、眼鏡をかけて、隠す。ミミズ腫れも、僕の中に潜む化け物も。