たあくんというのは綾が彼を呼んでいたときの名前だった。

 あたしは彼のことをそんな風には呼ばない。

「あたしを裏切ってまで手にした男だもんね。大切にしないとバチが当たるわよ」

 女のあたしでさえかわいいと思える笑みを浮かべていた。

「……裏切るなんてそんなこと」

「はるか」

 美智子があたしの肩をつかんだ。彼女は手に力を込めていたようで、肩が少し痛い。

 あたしはそのとき、我に返った。

 さっきまで目を開けていると思っていた綾は目を閉じ、安らかに眠っている。

 さっきまで微笑んでいたようには


 見えない。