ずっと[短編]

「これを渡したくて」

 彼が顔を赤く染め、差し出したのは指輪だった。

 あたしはそれを見て何も言うことができなかった。

 唖然としていたのだ。

 綾を棄てた彼があたしと結婚を望んでいるとは思いもしなかった。

 同時に嬉しかった。

 あの子の涙が頭に浮かばなかったわけではない。

 でもあの子よりも自分を選んだ。

 あたしの幸せを選んだのだ。