ずっと[短編]

 あたしはしばらく悩み、彼と別れようとした。

 親友を裏切ることなどできなかったから。

 涼しい顔をして、また綾の隣で微笑んでいようと思った。

 最悪な行いだったとしても、それを知られないならかまわないじゃないかと自分に言い聞かせる。

 でも心のどこかであの子を捨てたようにあたしも捨てられるかもしれない。

 そう思っていたのかもしれない。

 別れを持ち出そうとした日、山田拓はいつもより明るい表情を浮かべていた。

 彼は嬉しそうな顔をしている。

 綾を一週間前に泣かせたくせによくそんな顔ができるな、と思っていた。