もう帰ろうかな…



そんなことを思っていた時だった。




「七瀬」






ふいに名前が呼ばれ、あたしは

驚きながら前に視線を向ける。




「コーヒー入れてこい」

「…あたしはパシリですか」

「いいから、早く入れてこい」



ちぇ、とあたしは仕方なく机から降りて、準備室の方へ移動する。



「最高に美味いコーヒー、
入れることが出来たらご褒美やるよ」

「ホント…っ!?」




思わず叫んでしまうと、

今まであんなに止まることの

なかったチョークが停止し、

下の受け皿に落とされた。





「ああ」


そしてあたしに視線を向けると、微笑みながら頷いた。




外から吹いてきた風が、

サワサワ、とあたし達を包み込んだ。






<君はいつだって卑怯だ>