夢のような恋だった


その時、天の助けのように私の携帯が鳴った。
慌てて鞄から出して見ると、発信者はサイちゃんだ。

「もしもし、サイちゃん?」

『ねーちゃん。……あのさ、変なこと聞くけど。琉依見てない?』


電話の向こうのサイちゃんは息を切らしている。
琉依ちゃんがいなくなって心配していたのかな。

ちらりと顔を上げると、琉依ちゃんは手をブンブン振って、ここにいるのを教えるなって態度をとっている。

ごめんね。
私もサイちゃんのお姉ちゃんだから。
この子のこんな必死な声に嘘はつけないや。


「ここにいるよ」

「紗優ねえちゃん!」


琉依ちゃんの批難めいた声に私は苦笑を返す。


『替わって。琉依と話させて』

「うん」


携帯を差し出し、「サイちゃんから」と告げると、琉依ちゃんは私を恨むように見つめて、渋々電話に出た。


「もしもし、彩治?」

『まさかねーちゃんのトコとは思わなかった。探したんだぞ、琉依。俺のせいか』

「そんなんじゃないよ。彩治は別に……何も悪くないし」


すねたような声を出す彼女は、次のサイちゃんの一言に体をこわばらせた。


『壱瑳、マジで心配してる』

「心配なんてしなくていいのに」

『お前それ本気で言ってる?』


漏れ聞こえてくる二人の会話。
琉依ちゃんとサイちゃんだといつも琉依ちゃんが優勢なイメージがあったけれど、今日だけは立場逆転しているみたい