夢のような恋だった



「……智くんとはそれきりなの」


話しながら、目が潤んでしまった。
琉依ちゃんが心配そうに私を見つめている。


「だから、いきなり進路変更だったんだ。お母さんが愚痴ってた。うちではさ、県内の学校の方がお金かからないからって安易に賛成されてたよ。
お兄ちゃん、急に志望校替えて一次募集で落ちて、お母さんなんかもうカンカンで。二次募集で何とか引っかかってそこ行ったんだけど、決まったのギリギリだったから、アパート決めるのも大変だった」

「ごめんね。もっと早くちゃんと説得できてれば、推薦にも間に合えたかもしれないのに」

「でも、それって紗優ねえちゃんが悪い訳でもないんじゃない?」


私は小さく首を振る。


「ううん。私のほうが年上だから。……やっぱり上手に智くんを導いてあげなきゃいけなかったんだと思う」

「そうかなぁ」


琉依ちゃんは不満そうに首をかしげる。


「……でも、今お兄ちゃんこっちに戻ってきてるんだよ? 就職こっちで決まったから」


私は思わず体を震わせてしまった。
動揺を悟られないように、琉依ちゃんからそっと視線を外す。