夢のような恋だった


新見さんは驚いたままの私に、申し訳無さそうな顔になって告げる。


「嫉妬からこんなこと言ってる訳じゃないんです。ただ、進路決めるのにそれっていいのかなって思ったから」

「ううん。いいの、ありがとう」

「中津川くんに私がバラしたって言っていいですよ。ただ、ちょっと考えてあげてください」


新見さんは昔智くんが好きだった。
だからこそ、真剣に考えて私に助言してくれたのだろう。

私は自分が恥ずかしかった。
彼の将来より、自分の気持ちを優先していた事が。


それで、それとなく彼に進路の話をした。

行きたい学科があって、陸上もできるならそれが一番だって。
距離が離れたって、私は智くんのことずっと好きでいられるからって。

だけど、智くんは頑なに、私から離れることを拒んだ。

春からの彼の不安は、私が想像していたよりもずっと巨大化して彼の中に存在していたらしい。


こじれにこじれた十二月。
推薦の話は流れたまま終わってしまった。

それでも一般入試ならなんとか間に合うかも知れないと思って。



もう他にどう言ったらうまくいくのか分からなかった。

智くんがここにこだわるのが私の存在だけなら、逆に私に会いたくないと思わせるしかないとそう思って。