夢のような恋だった


 だけど秋になって、高校の文化祭を見に行った時、彼の同級生である新見さんが、私が一人の時にこっそりと耳打ちした。


「先輩知ってるんですか?」

「何を?」

「中津川くん、県外の大学推薦蹴ったって」

「え?」


初耳だった。
県外なんて言葉さえ、彼の口からは一言も出たことがない。 


「陸上も強いし、情報系と芸術系の学部もあるからピッタリだって颯が言ってたのに」


颯くんは智くんの親友で、二人共陸上部で競いあうようにタイムを上げていた良いライバルだ。
新見さんは、その頃颯くんと付き合いだしていたから聞いていたのだろう。


「私知らない。……聞いてないよ」

「若葉大学って、文系が強い大学じゃないですか。ちょっと違うかなって私は思います。
中津川くん、嘘かホントか知らないけどゲーム作る仕事したいって言ってたし。そこいくメリットって、葉山先輩がいるってだけでしょ?」


思わず息を飲んだ。その通りだと思って。

彼が、ゲームクリエイターになりたいっていうのは知ってた。
昔からゲームが好きで、いつかこんなの作りたいって夢見るように言っていたのは何度も聞いた。

頭の片隅でわかっていて、私は自分が彼の傍に居たいためだけにそこには触れなかった。