夢のような恋だった


嫌だ、変な人じゃないよね。

目を凝らして見つめる。
アパートの階段のところの明かりがなんとなく照らすだけなので人影はぼんやりしているけど。

……よく見ればそんなに大きくない。
それに下半身の膨らみはスカートだ。

何だ、女の人か。

でもそれにしたって誰?


不信感を抱きながらも、私はアパートに近づく。

そして後数メートルの所まで来て、その人物が誰なのかわかった。


「……琉依ちゃん?」


まばたきをしてもう一度見る。

紺地のブレザーに薄紫のリボン、そしてグレーのチェック地のプリーツスカート。
私が昔着ていた制服とおんなじ。

私のつぶやきが聞こえた訳じゃないだろうけど、扉に寄りかかっていた人影は瞬発的に踊り場の欄干まで移動する。


「紗優ねえちゃん」


ああやっぱり。
呼び方も変わってない。

サラリと顎のラインで滑る髪。
琉依ちゃんの癖は智くんほど強くないのか、髪全体のボリュームだけを出して上手くまとまっている。


「そこで待ってて」


私は階段を駆け上がり、久しぶりに会う弟の友達の傍へ行った。

昔は胸ぐらいまでしか背丈が無かったのに、今の琉依ちゃんは私よりも高い。
当時の面影を残しつつ、その顔や体つきを見たら、もういっぱしの女性のようだった。