夢のような恋だった



 結果として、私はいつもより飲み過ぎてしまった。
だけど楽しいお酒だったわけではなくて、どちらかと言えば涙腺が緩くなっただけ。

山形さんたちと駅で別れた途端、一人になった気の緩みから私の涙は止まらなくなった。

早く帰ろう。
家で泣いて、スッキリして。
そうして智くんのことを忘れなきゃ。

他人行儀に接したってことは、智くんは私との過去は無かったことにしたいんだ。

もう別れて六年もたつし、私に草太くんが現れたように智くんにだって別の彼女がいるのかもしれない。

これから先、もし仕事で話すことがあっても、初対面みたいに話せばいいんだよね?


「うう」


想像して胸が痛むとかあり得ない。

なんで?
そんなにショック?

別れた時からそんなこと覚悟してたはずなのに。

はぁ、と大きなため息を付いて目をつぶる。すると聞き覚えのある声に名前を呼ばれた。



「あれ、紗優ちゃん?」

「え?」


そこにいたのは茂くんで、私は目を疑って何度か瞬きした。


「やっぱり紗優ちゃんだ。どうしたの、草太と喧嘩した?」


飲み会でもしていたのか、数人の男女が少し離れたところでこっちを見ている。
草太くんはいないから、職場の飲み会ではないのかな。