高柳さんというチームリーダーさんが智くんともう一人の若い男の人をけしかける。
「幾多巡(いくた めぐる)です」
「……中津川智(なかつがわ さとる)です。よろしくお願いします」
声も変わってない。
彼の口から発せられる彼の声。
慣れ親しんだもののように、脳や体に染み渡ってくる。
「じゃあ歓談ということで。ほら、まずは乾杯といきましょう」
進められるまま、まずはビールでの乾杯となる。
勢い良く飲んでみたけど、苦いお酒はあまり得意じゃないし炭酸が喉に直撃してむせる。
顔をしかめて口元を拭き、顔を上げると智くんと目が合った。
「……っ」
顔が熱くなって、私は思わず目をそらす。
私の事見てた?
どうしよう。
こんなんじゃ、マトモに話せそうもない。
幸い席は遠かったので、宴席が始まって一時間はなんとなく会話もせずに過ごした。
だけど、やがて中地先生とかが席替えを始め、なんとなく大人しく座っていた私の隣に、例の二人がおされるようにしてやってきた。



