夢のような恋だった



「紹介は中でしましょうか。入りましょう」


山形さんに背中をおされて、私はようやく我に返った。

お店は地下にあって、一列になって階段を下りながら先を行くくせ毛の彼をじっと見つめる。

……間違いないよね。

どうして?
どうして今頃会ってしまうの?

あの頃よりも長くなったくせ毛の髪、笑わないその横顔は大人の男の人のもので、目を奪われる。

智(さとる)くんだ。
間違いない。

心臓が早鐘を打って止まらない。

どうしよう。なんて挨拶すればいいの。


「さて、では本日は顔合わせということで……」


山形さんが中心になって、それぞれを紹介してくれる。
まずは私達の方から。
下っ端作家である私が紹介されたのは一番最後だ。

ああなんでペンネームを本名にしてしまったんだろう。


「葉山紗優です。よろしくお願いします」


頭を下げ彼の視線をやり過ごす。

どんな目で見られたんだろう。
私は俯いたまま座って、今度は制作会社の方の自己紹介を聞いていた。


「……で、こっちがスタッフです。打ち合わせなんかは僕が代表してやることになると思いますが、実際にプログラムを作るのはこの二人。ほら、挨拶して」