夢のような恋だった



「すみません。私が道が分からなくて。葉山です。はじめまして」

「あなたが葉山さんね。中地です。よろしく」

「よろしくお願いします。先生の絵本大好きです」


緊張でテンパってきた。
手は汗だくだし、自分で自分が何を話しているか分からなくなりそう。


「葉山さん、お久しぶりぃ」

「一ノ瀬さん。今日はよろしくお願いします」

「こちらこそー」


あ、でも。話すとやっぱり一ノ瀬さんだ。
私はホッとして一ノ瀬さんの隣をキープする。


「あ、ほら。制作会社さんの方も来たわよ。どれ、イイ男いないかしらね」


ノリノリの中地先生を担当編集の矢部さんが「落ち着いてくださいよ」となだめている。
なんだかいいコンビかも、なんて笑ってしまう。


 近づいてきた集団は男性五人の集団だった。
年齢は様々で、三人は堂々としているけど二人は後ろのほうで所在なげに佇んでいる。一番年配そうな人がまず山形さんを見つけて挨拶した。

 あの二人も下っ端かな、と親近感を感じて奥に立つ二人を見て、息が止まるほど驚いた。

一番端で、居心地悪そうに佇むのはくしゃくしゃのくせ毛の人。

あっちも私を見て絶句し、その後ふっと視線を逸らす。
心臓が槍でも突き刺さったみたいに痛い。