夢のような恋だった


「違うの。ただ、羨ましいだけ。二度も素敵な恋ができるんだなぁって」

「……あれから新しい彼氏はできてないの?」


心配していってくれてるのは分かるのだけれど、私はしかめっ面しか出来なかった。


「できた。……でもうまくいかないや。浮気されちゃった」

「紗優」


お母さんが心配そうに肩を抱いてきたので、身じろぎをして腕を払った。


「違うの。同情されたい訳じゃないの。……だったら終わりかなって思えるくらい、私の気持ちだって曖昧なのよ」


真剣に恋をしていたなら、泣き叫んだりとか責め立てたりとか出来ただろう。

浮気をする人とは付き合いたくない。
それは私の潔癖さがそう思わせているだけで、草太くんが浮気したことに対しては諦めに似た気持ちしか湧き上がってこない。


「仕方ないなって思えるのは。……多分私もそこまで本気じゃないからよ」


好きだと言ってくれるなら。
それで寂しさが埋められるなら。
彼と付き合い始めたのは、そんな上から目線の感情からだ。

そんな私に草太くんをなじる資格がどこにある?