夢のような恋だった


「……それより、絆くんは元気なの? サイちゃんのこと覚えてた?」


あからさまに話を変えたけれど、サイちゃんは追求してこなかった。

「うん。覚えてたよ。でもアイツはクールだからさ。なんつーの感激が薄くてつまんねぇ。
俺なんて廊下の端から『絆ー』って叫んで飛びついたのに、『名前で呼ぶのやめろ』って殴られた」

「あはは。相変わらず名前がコンプレックスなんだね」


 絆くんのご両親は本当に仲がいいので、それを体現したような自分の名前が昔から恥ずかしいらしい。
一つ下の妹さんの名前は結(ゆい)ちゃんといい、この名前も大概だろうとは思うけど、結ちゃん本人は気に入っているようだ。


やがて食事が終わり片付けの手伝いをしようとすると、
「ここはいいからプレゼント開けてみなさい? 和室に置いてあるわ」
とお母さんに言われる。

テレビを見ているお父さんとサイちゃんの脇をすり抜け、私は和室に入り電気をつけた。

パパの仏壇も、以前と変わらずここにある。
その下に置いてあるプレゼントを開けるより早く、仏壇の扉を開いてお線香を一本付けた。

変わらない笑顔の写真は、随分黄ばんでしまっている。

パパが死んだのは何歳の時だっけ。
今の私よりは年上だろうけど、それでも数年しか変わらないはずだ。