「ありがとうございます」
「なんか、……すいません。俺たちのためにわざわざ」
「あら、気にすることないわよー。打ち上げのついでって言ったでしょ」
中地先生がウィンクして、からかうように笑う。
「夫婦の共同作業が形になったわけじゃん。いいね」
一人がドリンクを持ち上げて、釣られたように皆がグラスに手をかける。
「乾杯しましょ、おめでとう!」
目の前でカツンと音を鳴らすグラス。その一音一音が胸を震わせる。
気分が高揚して体中が熱い。
「ありがとう、ございます」
「さあ、まだまだ飲むわよー!」
中地先生を中心に、皆は私達を放って盛り上がる。
それを眺めていると、智くんがグラスを合わせてきた。
「乾杯」
「なにに?」
「とりあえず、運命に、かな?」
ゴクリとグラスを飲み干して、私もなんだかいい気分になってカクテルをぐいと飲み干した。
ケーキはお店の人が切り分けてくれて、それを食べながら、顔にぶつけあう中地先生と幾田さんを見て笑う。
それから後の記憶はない。
記憶が無くなるほど飲むなんて、人生で初めてのような気がする。
ふわふわ、揺られているような感覚が気持よくて。
ずっとこのままでいたいって思う気持ちを、肌を撫でていく風が少しずつ冷ましていく。



