「琉依ちゃん」
「……なんで彩治や西崎まで来るの。私はただ、こんな顔壱瑳に見せられないしと思って出てきただけなのに」
確かに、一目で一晩中泣いていたと分かる顔はしているけど。
「だって。書き置きあっていなくなられたら誰だって心配するでしょう」
「心配なんかしなくていいのに」
「琉依ちゃん」
叱るような声を出せば、琉依ちゃんはバツが悪そうに私を見る。
「……ごめん」
「うん。……ちゃんと話して? 壱瑳くん全然教えてくれないの。おばさんも智くんも、何があって琉依ちゃんがいなくなったのか全然分かってない。私だけ、……薄々気づいたんだけど」
ちらりと見ると琉依ちゃんの顔は赤くなっていた。真一文字に結んだ唇が小刻みに震えながら動く。
「私、言っちゃったの、壱瑳に」
「うん」
「好きだって言った。壱瑳とずっと一緒にいたいんだって。私を一番にしてって」
いいながら尻すぼみになっていく琉依ちゃんは、一度鼻をすする。
「壱瑳、好きな人できたんだよ」
「え?」
「バイト先の人。私もよく知らないけど見たことはある。片思いみたいだけど、壱瑳の気持ちがそっち向いてるのは分かる。……だから、壱瑳は私にゴメンって言った」
琉依ちゃんはそのまま私に抱きついてきた。



