夢のような恋だった



「黙ってちゃ分からねぇだろ。とにかく今から行くから。それまでに状況をまとめてちゃんと説明しろよ」


電話に向かってそうまくし立てて切ると、智くんは申し訳無さそうに頭を下げた。


「すいません。せっかくお邪魔させてもらったのに、急用が出来たので失礼します」

「智くん、何かあったの?」

「琉依が家出したって」

「え?」

「寝坊してると思って起こしに行ったらいなくなってたって。俺も探しに行かなきゃ」

「私も行くよ」


どうしたんだろう。

あの琉依ちゃんが家出?

あんなに家族大好きなのに。


「……あ」


そういえば。
以前もらったメールに返事をし忘れたままだ。

【なんかもう色々面倒くさい】

どこか投げやりな、琉依ちゃんらしくないメール。
もしかしてだいぶ前から何か悩んでいたのかも知れない。


「まあ大方友達の家に行ってるんだろうけどさ。琉依は友達が多いから、探すのに手こずってるみたいだ」

「みんな分かるの?」

「壱瑳がある程度は把握してると思う。まあ同じクラスじゃねぇから、完璧とは言えないだろうけど」

「そっか。サイちゃんにも連絡してみようか。何か知ってるかも知れないし」