夢のような恋だった


「はい。じゃあこの話はおしまい。智くん、暑いんだから上着なんか脱いで楽にしなさい?」


最後はやっぱりお母さんが仕切って、話をまとめた。

テーブルの上におかれた冷たいお茶はもう水滴だらけになっていて。
智くんはそれを一気に飲み干すと、まるでビールでも飲んだ時みたいにはーっと声を上げた。


「緊張した」

「俺も焦ったよ。まさかこんなすぐ紗優をもらいに来るとは思わないし。……まあ結婚と言われなくて俺は逆にホッとしたかな。同棲も、執行猶予みたいなもんだけど」

「一年後には結婚の申し込みで来ますよ?」

「一年でそんなに稼げるのか?」

「稼げてなくてもそれ以上は俺も待ちたくないです」


お父さんも急に笑顔が多くなって、智くんと話が盛り上がってきた。


「じゃあ、住むとこはどうする? あのアパートに転がり込むつもりじゃないんだろ?」

「もう少し広いところを借りたいと思ってます。俺と彼女の仕事の沿線がいいなと思って。ここからも近いほうが安心だし。俺、仕事上徹夜って時も多いので」

「実はいいところを知ってる」


ノートパソコンまで引っ張り出してきてアパートを物色し始めるから、私は驚いてお母さんを見る。