夢のような恋だった


「紗優が心配なのは俺も同じだよ。だから家に帰ってこればいいと思ってる。俺は君との付き合いには反対してないが、今が時期じゃないと思うなら、もう数年待ってみるのはどうだい?」

「それは……」


智くんが言葉に詰まった。
私は二人を交互に見ながらちょっと困ってしまった。


お父さんの言っていることは正論だと思う。

でも、数年も待つなんて私は嫌だ。

結婚なら許してもらえる話ならば、籍だけでも入れればそれで済むと思うのだけど、ちゃんとしたいと思ってくれる智くんの気持ちも無碍には出来ない。

困ってお母さんを見つめると、意味ありげに微笑まれた。
背中を押してもらった気分になって、私は身を乗り出す。


「私が、智くんといたいの」

「紗優」

「ずっと離れててやっと会えたの。もう離れていたくないの。お願い、お父さん」

「っ、お、俺もです。もう紗優と離れたくないんです。お願いします」


再び頭を下げた私達に、お父さんはまた笑い出す。


「二人共顔をあげなさい。悪かったよ、からかって。……相手が智くんなら仕方ないだろう。俺は反対しないよ」

「お父さん」

「……紗優を頼むよ」

「はい」


ホッとして智くんと顔を見合わせる。
そんなつもりはなかったけど、自然と笑い合っていたみたいでお父さんは「見せつけるな」と愚痴りだした。