夢のような恋だった



日曜日の朝九時。
私と智くんは、実家のマンションの前にいる。


「あー、緊張してきた」


今日の智くんは、スーツ姿だ。
昨日泊まりに来た時、随分大荷物だなとは思ったけれど、まさかスーツまで入っていたなんて。

最初に着替えた姿を見た時、驚きすぎて言葉が出ず、考えあぐねてようやく出した声はこれだ。


「智くん、スーツなんて持ってたんだね」


彼の仕事は基本服装は自由だ。
いつもTシャツにジーンズばかりだったから、見慣れない格好に彼が年上になってような感じがしてドキドキしてしまう。


「就職活動の時に買ったやつ。実はこれと礼服しか持ってない」

「あはは」


でも私も似たようなものだ。
ちゃんとした就職活動もしていないので、数着しかスーツは持っていない。


「でもしっかりしすぎじゃない? 結婚の報告とかでもないのに」

「俺にしたら同じようなもんだよ。行こう。これ以上とどまってても緊張マックスになるだけだ」


同じようなことを言って、朝も早いうちから出てきてしまったんだよなぁ。
まあ、行く前にメールはしたから、迎えうつ二人も準備は万端だろうと思うけど。


彼は私の手を引っ張ってエレベーターに乗り込む。
手が汗ばんでいるのば緊張している証拠かも。