夢のような恋だった



 それから週末までの間に、茂くんが一度謝りに本屋にやってきた。
「話がしたい」って言われて思わず身構えてしまったら、茂くんは覇気なく笑う。


「怖がらないでよ。そこのカフェで話そう。それなら人目もあるし、心配ないでしょ?」


併設のカフェを指さされて、私は仕事の終わる時間で指定した。


その後、カフェで向かい合いながら、茂くんはボソボソと今までの経緯を話してくれた。


「中牧に嫌な噂流すように頼んだのは俺なんだ。草太と別れて、紗優ちゃんが心細い時に仕事でも辛くなれば、俺に頼ってくれるかなって思ってた。
……草太はそれを知って、俺を脅してきた。だからこの間も草太に協力して君を……」


思い出すと、胸がざわざわする。
私の表情が曇ったのに気づいて、茂くんはもう一度頭を下げた。


「俺が馬鹿だった。意地になって君を沢山傷つけた。本当にゴメン」

「うん」

「この間。君のお父さんに叱られて何かちょっと目が覚めた。
仕事するようになってからって誰にも叱られることなんて無かったから、いつの間にか自分がしていることが間違いかどうかなんて考えなくなってた。それは、草太も同じだと思う。悪いことをしたら叱られるって、本当なら当たり前のことなのにな」