「お父さんもお母さんも、智くんのこと好きだから大丈夫だよ」
「ん。そっちは緊張はするけどそこまでは心配していないんだ。それより、難敵は身内にいる」
「身内?」
小首をかしげて尋ねると、智くんはため息を一つ落とす。
「ウチの母親。けじめにはうるせぇから。おとといの無断外泊も気に入らないらしいし。同棲したいって言ったら何言われるかわからない」
「じゃあ、結婚する?」
「式もあげられないのに? 俺まだそんなに貯金無い」
「私は籍だけでもいいよ?」
「それだとおじさんに顔向け出来ない」
じゃあどうすればいいの。
そんなに真剣に悩まなくても、一緒にいられるなら私はなんでもいいのに。
男の人って時々難しい。
「……とりあえず今日はどうするの? 帰るの?」
無断外泊を責められたのなら、と聞いてみると彼は首を振った。
「今日は泊まってくるって言ってある」
「怒られない?」
「怒られはしないよ。ただ、けじめの付かないことはすんなって言われるだけ」
おばさん、割とハッキリした人だもんなぁ。
できれば認めてもらって一緒にいたいんだけど。



