「……私も智くんに振られたらずっと一人かも」
ポソリと告げると、智くんは目を丸くする。
「紗優は普通にモテるじゃん。高校の時だって夏目とか東川先輩とか、結構告られてたじゃん」
「よく覚えてるね。……でも、よく考えたら私も智くんより好きな人っていなかったんだもん」
なんだか恥ずかしい話になっている。
顔が熱くなってきて、ちらりと彼を見れば彼の方も頬が赤いから、私達は顔を合わせて笑った。
「じゃあ、紗優は俺と一緒にいよう、ずっと」
「うん」
嬉しくてぎゅっと抱きついたら、彼が髪を撫でてくれる。
何度か頭頂から毛先までを行ったり来たりさせながら、ぼそっと呟いた。
「じゃあ次は親の説得だな」
「え、でも」
この部屋に智くんが入り浸るだけなら、誤魔化せそうな気もするけど。
わざわざ大きい部屋を借りなくたって、数年ならそれもありなんじゃないかしら。
そう思ってちらりと見たら、意図を汲みとったのか智くんは首を振る。
「おじさんはライバルだから、正攻法で向き合わないと」
「ライバル?」
「俺にとってはずっとそうだよ。一度でも逃げたら一生負け犬になる」



