夢のような恋だった



「……でもやっぱり、本当の恋の方が幸せだなとも思う」


一瞬、お母さんが目を上げる。
探るように私を見つめて、やがて口元を緩めた。


「そうね。だからお母さんは今幸せよ?」


今は本当の恋をしてここにいるのだと誇るような笑顔に、私も口元がほころぶ。


「……私も。もう一度智くんに会えたから」

「え?」


今度は目を丸くして驚かれた。
私は何かに背中を押されるような気持ちで一気に告げる。


「お母さん、私、今智くんと再会したの。今付き合ってる。智くんが好きなの」


次の瞬間に、お母さんに抱きしめられた。

柔らかい感触と懐かしい香り。
今でもサラサラなきれいな髪が、私の頬に触れる。


「……そう、良かった」

「うん」


もしかしたら、私をずっと一番に心配していてくれたのはお母さんかもしれない。

普段から声を荒立てたりはしないお母さんの感極まったような声に、私はそんなことを思った。