夢のような恋だった


本当に不思議そうに問いかけた智くんに、お父さんが何か耳打ちした。

小声過ぎて聞こえない。
なんだろう。
私も気になるのに。

智くんは、目を丸くして「そっか。はは。そうかぁ」なんて笑ってる。

気になるけど、今は聞けない雰囲気だ。


「ところでさ、そろそろ戻らないと駐禁とられるんじゃね? とーちゃん」


サイちゃんがボソリと言うとお父さんがハッとなった。


「そうだった。路上駐車してきたんだった。紗優、仕事終わったんなら送る」

「あ、うん。でも」

「そうしなよ。俺、仕事に戻らないといけないから。……できれば今日は実家に帰れよ。心配だし」


智くんもそう言って時計を見る。
今日は忙しいって言っていたもの、もしかしたら会議とかそういう予定があったのかもしれない。


「うん。ごめんね。でも来てくれて嬉しかった」

「遠慮しないでいつでも電話していいよ。毎回来れるかは分からないけど」

「ありがとう」

「智くんも近くまで送るよ。一緒に行こう」


お父さんに促されて、私達は表通りまで戻った。
お父さんの車は、確かに路上に駐車されていて、大通りの進行を若干詰まらせていた。


「おおセーフ。警察きてたら確実に駐禁取られるとこだった」


笑いながら、サイちゃんが助手席に、私と智くんが後部座席に乗り込んだ。
ムスクの芳香剤が漂う車内はきた時の冷房がまだ残っているのか涼しく、私は軽く身震いをした。