夢のような恋だった


お父さんは私から智くんへと視線を移すと軽く会釈する。


「智くん、来てくれてありがとうな」

「いえ。おじさんが来てくれてて助かりました」

「……やっぱり再会したんだなぁ、君と紗優は」


くすりと笑って、今度は私を見る。
私と彼の関係が戻っているのはバレてしまっているようだ。


「でも、やっぱり俺はおじさんに適わないや。あの男だって、俺の時とは違っておじさんにはスゲーびびってた」


智くんはお父さんと並ぶように立って声を潜めて話した。
さっきよりも声がくぐもって聞き取りづらくなったから、もしかしたら私には聞かせたくない話なのかもしれない。


「おじさんは、格好いいし金も持ってるし喧嘩も強そうだし、なんでも出来る。だからずっと紗優はおじさんのことが大好きで。……俺、今でもなんかモヤモヤします」


まるで昔からお父さんにヤキモチを焼いていたような、そんな言葉に驚いて私は耳を澄ました。
話しかけてくるサイちゃんの声も遮って聞き耳を立てる。


「まあな、まだまだ若造には負けれないよ。俺を負かそうなんて思わないことだ」


そこ、否定しないんだ。
お父さんったら、変なところ大人げないなぁ。

ちょっと呆れて聞いていると、お父さんは口調をしんみりとさせて続けた。


「でもな。……ただ一つだけ、俺が君に絶対に勝てないことがある。……知ってるか?」

「そんなのありますか?」