「紗優の、……親父?」
「そうだ。お前らを殺す権利は俺にはあるぞ。世界一カワイイ娘がこんな目に合わせられたんだからな」
「いや、殺す権利まではねーだろ」
ボソリと小声でサイちゃんが突っ込む。
もちろんお父さんだってそこまで本気じゃないだろうけど、草太くんと茂くんは、本気でおののいているみたいだ。
「も、もうしません」
先に泣きをあげたのは茂くんだ。お父さんは満足したように頷くと次に草太くんに視線を向ける。
「お前は? その作りのいい顔に傷でも付けてやろうか?」
「や、やめろよ、おっさん」
「誰がおっさんだ! お前らもいい大人だろ。口の聞き方と責任のとり方を教えてやる」
本気で怒るお父さんって、こんなに怖いんだ。
私も何度かは怒られたことあるけれど、あれって手加減されていたんだなぁ。
「ねーちゃん、これ」
「あ」
何度も何度も繰り返しかけられている電話。
今もまだ鳴り続けている。
……ってことは、鳴らしてたのはサイちゃんじゃなかったんだ。
サイちゃんから受け取った携帯の画面に表示された名前に眼の奥が熱くなった。
ああ。彼はちゃんと私を助けてくれていた。
「智くん」
「智にーちゃん、心配してかけてきたんだな」
「サイちゃんが智くんに伝えたの?」
「だってなんか変な電話だったから」
「うん。……うん。ありがとう」
「早く出なよ、切れちゃうよ」
「うん……もしもし?」



