「こっちこそ。沢山相談に乗ってくれてありがとう」

『また今度遊びに行くね! じゃあね。たい焼き冷めるから!』

「おやすみ、琉依ちゃん」


仲の良い家庭の雰囲気が、電話越しでも伝わってくる。
私の心までホカホカ気分になりながら、再びシナリオに向かう。


気分も乗って書き進めていたけれど、二十三時を過ぎた辺りで携帯電話がなった。


「こんな時間に誰? もう、調子良かったのに」


手に取ると着信音が途切れる。
まだ五コールほどしかなっていないのに随分短気な。

そう思って、発信者を見て眉を潜める。

……非通知?

嫌な気分が広がっていく。
いたずら電話かしら。でも私の携帯を知ってる人なんて限られているけれど。

シャワーを浴びてベッドに入る直前、再びコールが鳴り二回で切れる。
発信者はやっぱり非通知だ。

胸がざわついた。

誰かが嫌がらせしているのかしら。
する人間も、今だったら想像がつく。

草太くんか、茂くんか。

中牧さんや茂くんの話を総括すると、草太くんは私のことを酷く言っているようだ。
だとすればやっぱり草太くん?


「……どうしよう」


迷った末、ネットで調べてみると、非通知受信拒否設定というものがあるらしい。

ナビゲートにしたがって設定をし、ホッと息をつく。
この部屋に固定電話は置いていないので、これで煩わされることはないだろう。

心臓はバクバクしたままだったけれど、今は深夜だ。
誰かに電話をかけるような時間じゃない。

仕方なく私はそのままベッドに潜り込み、浅い眠りのまま翌朝を迎えた。