「あはは、名前を書き忘れるなんて、たまにちょっと抜けてる由依らしいね」


「もう!彩夏まで笑わないでよ〜」


ああ…これはもう、穴があったら入りたいよ。


でも、ラブレターに名前書いてなくて、かえって良かったかも。


山田くんに勝手に声に出してラブレターを読まれた上に、ラブレターの差出人が私だって知られていたら、今よりもっと恥をかくところだったもん。


最悪な事態だけは、免れたってわけか。



私の告白は今回は失敗に終わったけど、どうせならこのまま、ラブレターを書いたのが私だって、バレないといいなぁ。


私はこの日、学校が終わるまでずっと、なんとなく気持ちが落ち着かないまま、過ごしたのだった。