殺し屋 『狼』


 一章  - 1 『日常』

世の中は明るいばかりでは無い。
表通りに太陽の光がある限り、路地裏には影が堕ちるのと同じ事だ。
 
活気のある通り。店主が笑顔で客に接客をし、それに答えるかのように同じ様に笑顔で品を買って行く客。
俺はそんな笑顔が苦手だ。楽しくもないのに笑うなど俺には無理な話しである。
笑っている人々を横目に俺は店と店の路地に入った。
路地裏へ抜けるとそこは閑散としていた。表通りから路地裏に移動した為に余計に寂しく見える。
ブーツの乾いた音が道に響く。俺は何度この音を聞いてきたのだろうか。この世界に足を踏み入れる時に散々確認されたな。二度と表には出ることは出来ないことになるけど、本当に良いのかと。俺は自らが選んだ選択肢に後悔なんてしていない。今だってそれは変わらない。
 
 「にゃあ。」 

道の先で聞き知った声がした。
下を向いていた視線を前に向けると継ぎ接ぎだらけの赤ちゃん程の猫のぬいぐるみを腕に抱き締め、野良猫に話しかける青年が居た。青年と言っても、彼は16歳だ。名前はラディン。人との関わりを避ける彼は猫としか対話しない。
 
 「………ウルフ、皆待ちくたびれてる」

ぼそりと呟かれた声に返事をしながら考える。
元々、この召集はヒカリさんが自由参加で掛けたものだ。ブラックリストに所属していると認めていない俺が
何故いかなければならない?

 「……………下がって。」

突然、ラディンが俺の背後に飛び出した。
 
 「……あぁ、雑魚か。悪かったなあまりにも殺気が感じられなくて、野良犬かなんかだと思った」 
 
これは事実だ。
ラディンに任せても問題ないだろうと判断し、俺は召集場所に足を進めた。背後から雑魚の断末魔が聞こえてきたのは何時もの事だ。


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