「…ふぅ」
ため息をついて、メイの部屋の机にもたれかかる。
父親は日本の観光に行ってくると出掛けたので、しばしの休息だ。
なぜメイの部屋かというと、ただ単にメイの匂いを欲したルイのたっての希望だった。
初めて入ったメイの自室を一通り観察し終わった野崎が、ようやく心配そうに覗き込んできた。
「…随分お疲れですね、社長」
「自分の父親と話すときが一番疲れる。心配かけてすまないな」
「社長の体力は知ってるので、そんなに心配してないです」
「……そうか」
「甘いものでも食べますか?」
「それよりも、メイにあいたい……」
ルイにとって彼女は精神安定剤なのだ。
「…もう少し我慢してください、ルコーラ様がお帰りの際に社長がいないと、怪しまれます」
「無論、わかってる」
今のはただのわがままだ、と呟いた。
「聞いてもいいですか?」
「なんだ」
「なんでそんなに父親と仲が悪いのですか?」
喧嘩でもしてるのかと思ったが、それにしては異常だった。
向こうは友好的だった気がするが、ルイは心を開くつもりなど毛頭なさそうだ。



