「……」
彼女は、迷った。
あの時のルイの焦りよう、メイの異常さ。
彼らを壊していいものだろうか。
絶対にこの子にメイのことを話したら、何かしらのアクションを取るだろう。
メイの純真さは弊害されてはならないような気がした。
「……いらっしゃいません。このお屋敷の住人は、ルイ様だけです」
「……さいですか」
これを聞いてるという時点で、たぶんバレてるのだろう。
けど、少しの抵抗でいいから、彼女は隠したかった。
「毎朝早くに奥に向かわれてるのはどうしてですか?」
「…ルイ様は猫を飼っておられます。餌を与えに奥へ」
「なるほど…ありがとうございます」
少年はなにやら考えながら礼を言って去っていった。
一人取り残された使用人は、ぽつねんと立ち尽くして。
「……ふぅ…」
あのメイを守れたことに、安堵していた。



