目の前の彼の必死さに、愛しさと可笑しさが芽生えたのだ。
「な、何笑っ…」
「そうですねぇ。もとより私はティンに守られたいので、離れないつもりだったんですが…」
「守られっ」
守られたいと言われ、赤くなる。
予想通りの発言に笑いながら、紅の瞳で彼の目を捕食するように見つめた。
「約束しましょう。何があろうと…あなたが死のうと私が死のうと、隣にいましょうね」
聞きたい言葉が聞けて満足したティンは、大きく頷いてボストンバッグに戻った。
衣服の下に、隠すように拳銃をしまう。
いざというとき出しやすいように配慮しながら、ぽつりと呟いた。
「できれば使いたくないな」
「ルイさんにはお世話になりましたものね。でもだからといって、躊躇してはなりませんよ」
「………わかってる。感情よりも状況を最優先して判断すればいいんだろ?」
「はい、私の姉だろうが姉の義弟だろうが、容赦しては殺されますからね」
リルの姉の旦那の弟、ルイ・ヒューアス。
長くカサンデュールにいないことから関わりはほとんど無かったが、関わってみて気づいた。
一見冷徹そうに見えるが、不器用で優しい人物だった。
とても、騙してるようには見えなかったが。
「……ああ、でもルコーラが来たら状況を見なくてもいいです。容赦なく殺ってください。許可は出てます」
「お前、ホント裏切りものに容赦ないよなぁ…」
「まあ…変な同情で放っておいたら私が殺されちゃいますよ」
「はいはい」
ティンはため息をついて、違う話を思い出した。



