だって遠巻きに、ルイが好きだと言ってくれたのだから。
恋愛感情かどうかはさておき、好きだと。
口角が上がるのを抑えられなかった。
「聞け、メイ。お前は話を聞かなすぎる。僕がメイを嫌うように見えるか?」
抱きしめながら、ほくそ笑む。
捨てられたくなかった。
その言葉を反芻しながら、愛しい彼女の香りを胸いっぱいに収めた。
(…捨てられたくなかったなんて、メイがそう言ってくれるなんて)
嬉しさで舞い上がりそうになりながら。
「僕はメイが好きだ。誰にも渡したくない」
「め、メイもです!ご主人様大好きですっ」
(あ、死にそう…)
この無邪気さから、本人はlikeを言ってるのだろうが、ルイの理性は暴走しそうだった。
必死に抑えて、抑えて。
「…だからね、メイ…。この部屋では守りきれないんだ」
諭すように、ゆっくりと教える。
「僕は父上にお前を渡したくない、守りたい。だから、野崎に守ってもらうことにしたんだ。
メイが嫌いになったわけじゃない、メイが好きだから守ってもらうんだ」
「……」
「メイ、僕は非力なんだ」
「ひり、き?」
「家庭教師のとき、メイを守れなかった」
「……あ」
ルイはずっと根に持っていた。
あのとき、結局メイは傷ついた。
つまりは守りきれなかった。
この件は失敗したらメイを失う、奪われる。
それだけは嫌だった。
ルイは必死だった。
人生でここまで守りたかったものはないというほど。
「頼む、守られてくれ」
そして、ずっと自分のものでいてくれ。
「ご主人様…」
メイにとって、ここまで必死な彼を見るのは衝撃だった。
メイにとってのルイ像とは、完璧で頭が良くて気が回って、優しくて、かっこいいものだった。
ここまで焦燥してる彼は、信じられなかった。
「……わかり、ました」
無碍にできるわけがない。
その答えにうれしそうに頷いたルイは、頭を下げた。
「ありがとう。必ず向かいに行く」
必ずに、含みを持たせた。



