「……ティン、なにをしょげてるのですか?」
「だって…リルがぁ…」
背中を向けて拗ねてしまっている。
苦笑しながら、背中をつついた。
「冗談です。本気になるなんて、ティンもまだまだですね」
ぱあっと明るくなった顔で振り向いて、嬉しそうに食いついた。
気のせいか、涙目だった。
「ほんと!?ほんとか!?」
「本当本当。…面倒くさいですねぇ、ティンは」
「…俺、リルに捨てられたらどうしていいかわかんねーもん」
「おおよしよし、怖かったでちゅねえ」
バカにした言い方で、ティンの頭を撫でる。
さながら犬と飼い主。
「大丈夫です、捨てませんよ。そう簡単に捨てられるものですか」
ティンは恥ずかしいのか赤くなりながらも、黙ってその言葉を撫でられながら受け取った。
「……」
珍しいものを見るように見つめるメイに気がついて、リルは微笑んだ。
「ごめんなさいね。この子が寂しがり屋なもんで…」
「う、うっさい」
口ではそう言いながら離れる気の無いティンは、矛盾していた。
「あの、て、ティンさん」
「ん?」
「ティンさんは、そのぅ…捨てられるのが、怖いんですか?」
意を決したように問う姿に、ティンは驚いた。
ようやく捨てられるかもしれないという恐怖が落ち着いたので、ほかのことに驚く余裕が出てきたのだ。
「うん、まあ…リルに捨てられたら家来の俺は餓死しかないし」
「……」
呆然と見つめられ、すこし居心地が悪いティン。



