動じることなく、あくまでもいつもどおりにリルは答えた。
「あらティン、ヒューアス家ならば申し分のない身分ですし、家来も納得するかと思いますけれど?」
「じゃなくて…その、その!」
「そもそも日本に来たのだって、ルイさんに興味があったのも含まれてるんです。
会って確信しましたわ、この方こそ私の伴侶です」
「はん…りょ?」
「結婚相手、とでも言いましょうか」
「リル!」
「黙ってください、ティン」
ぴしゃりと黙らせ、メイの反応を伺う。
「……!」
そして目を見開く。
一一彼女は、笑っていた。
しかしいつもとはどこか違う、大人びた笑い方。
言い方を変えれば、何かを押さえ込んでいる笑い方だ。
無意識なのだろう、けれど。
意味してることは明白だった。
「いいと思います、ご主人さまは…とてもお優しいお方です」
「……そうかしら」
「はい。…メイにもとっても優しくして くれます。メイはご主人さまが、その、大好きです」
「……いなくなるのですよ、そんなご主人さまが自分の元から。
寂しいとか、私が憎いとかは感じないんですの?」
「うーん…寂しいには寂しいです。けど、いつも一緒にいた人がいなくなるのは寂しいに決まってますもん。
あの、なんでリルさんが…うんと、憎く
、なるんです?」
心の底からなぜかわからないようだ。
鈍感なのか、無頓着なのか。
しかしリルにはこれよりも先にしなくてはならない事柄があったので、そちらに目を向けた。



