「別に私は…」
「メイ、はじめて同じ年頃の他人に優しくしてもらったんです」
断られると察したのか、被せてきた。
はじめて。
その言葉に疑問を覚えた。
(…この子はいつからここにいるのでしょうか)
学校にも通ってないという彼女。
異常さに疑問を覚えながら、話を黙って聞いた。
「わかってもらえないかもですが、メイは本当に、その…感謝をしてて」
「メイちゃん…」
「なにもないメイにも、お礼ができたらって思って」
抱きしめたくなる誠実さ。
小動物大好きなリルは我慢に苦労をした。
「…それで、そのぉ…」
ノートで顔を隠して。
「ずっと、仲良くしてくれたらなって」
「ティン、目と耳を塞いでください」
「うぇ!?」
驚いた声が聞こえた。
この子の愛らしさにティンが惚れたら不味いと先手を打つリルだった。
「でも本当にいいのですよ、私たちは見返りを求めてるわけじゃないですから」
「で、でも!」
下がる気はないらしい。
ここは彼女が無理をする前に、なにか適当に実現可能な案を言って落ち着いてもらおう。
そう考えたリルは思案し、たまたま目についたものを指した。
「じゃあ、一つ髪留めを交換しましょうか」
「え?」
リルは金髪を止めていた大きな青いリボンを解き、メイに差し出す。
「これを交換しましょう?日本にいたとき、友達が仲良しの儀式だーとか言ってたものですから」
「あ…でも、ないと困るんじゃ」
「たくさんあるので大丈夫です」
交換、というのは当初の目的と違っていたが、彼女が望むのならと髪留めを差しだす。
白いレース調のリボンの髪留め二つ。
俺も?と不思議そうな顔をしたティンにも渡した。



