ご主人様に監禁されて

◇◇◇


メイの自室は、最近出入りが激しい。

「あら、ここはこの公式を使うんじゃないかしら」
「え…あ、本当です!当てはまるです!」

学校から帰ってきたリルたちは、使用人の目を盗んでメイに会いに行くのが習慣となっていた。

現在家庭教師不在のメイにとって、勉強を教えてくれるものはありがたい。
しかも、ルイが帰ってくる前に。


「こうですか?」
「ええ、あっていますよ」


優しく笑いかけてくれるリルに、メイはとても充実感を感じた。
怒らないで教えてくれる存在に、俄然やる気が出ていたのだ。

「メイちゃんは飲み込みがよくてとても教えがいがありますね」
「あ、ありがとうです」

まだ同年代の人というものに慣れてはないものの、居心地の良い二人に心を開き始めてるのは確かだった。

「あの…」
「なぁに?」
「その、えと、ティンさんは何をしてるのですか?」

なにやら部屋をうろうろしているティンを指差す。

勉強を教える気のない彼は、主に徘徊をして過ごす事が多かった。

関係性の手がかりを探してるのだが、そんなことを知りもしないメイにとって、単純に疑問だった。


「ああ、動物的な彼のマーキング行為です」


「ちがぁああう!」

本棚を物色していたティンが突っ込んできた。

「まー、きんぐ…?」

知らない単語に首を傾げたメイだった。

「あの、まーきんぐってなんですか?」

「まあ…本当に初心ですのね。そうなると、あまり不埒な情報を与えるわけには行きませんね」

初心なものは初心なままにしておきたい教育方針。

「ようするに、うろつくのが好きなんですの」

「なるほど…認知症というやつなのですか?」

「にたようなものです」

「リル…お前俺のこと嫌いなのか…?」