「顔色悪いですよ…どうしたのですか?」
心配そうに覗き込んで来たので、どきりと心臓が高鳴った。
「精神的に疲れた。二重生活のようで神経使うんだ」
でもメイの存在をバラすわけには行かない。
それこそ、ヒューアンス家の終わりだ。
「に、じゅう…?」
よくわからなかったらしいメイの頭を撫でる。
さらさらの絹糸のようなリンカーングリーンの髪の毛。
うっとりするように目を瞑って、そして思い立ったように叫んだ。
「よくわからないけど、ご主人さま、疲れてるんですね!ならメイが肩もみしてあげます!」
「え?」
ソファに座らせられ、後ろに回るメイ。
そして肩にメイの小さな掌が添えられた。
「ちょ、くすぐったい…!」
あまり力がないから、そこまで奥まで浸透してこない上に小さな手だからくすぐったい。
それに、それに。
「むー、凝ってます…」
そう言って肘を肩に押し付けてきた。
頭部になにやら柔らかいものが伝わってくる。
「え…め、メイ!?」
ぐりぐりと肘を押し付けるたびに頭部を柔らかく包むは一一胸。
本人まったくわかってないらしく、肩を揉むのに必死だ。
「い、いいいよメイ!」
世に言うダイナマイトボディの持ち主。
これではルイの理性が持たなくなる。
クラクラしてきたルイは、たまらずメイを突き放した。
「えー…気持ちよくなかったですか…?」
「そんなに肩凝ってないんだ、大丈夫だよ」
「…そう、ですか…」
シュンとしてしまったメイに、慌てたのはルイだった。
「そ、そうだメイ!甘いものでも一緒に食べようか。野崎が今日美味しいチョコレートをくれたんだ、ぜひメイにって!」
正確には、メイと一緒に食べてくださいだった。
ルイが中々メイとの時間を作れないのを知っていたので、そのきっかけ作りに持ってきてくれたのだ。
遠巻きな野崎の優しさだった。
「チョコですか!わぁい!嬉しいです!」
想像通り諸手を挙げて喜んでくれた。
ホッとして、取ってくると部屋を出た。



