自給がいいから来てみれば、仕事内容は普通の使用人。


お客様などの約束の取り付けは主が自分でやってきて、仕事も当日や前日に『明日あるから』と話すだけ。行き先も内容も話しはしない。

屋敷の規模もそんなに広い訳ではなく、むしろ普通の使用人のよりも楽といえよう。


主は金髪青目の外国人イケメン。

しかも日本語ペラペラである。


何もかもが整いすぎた職場だが、いくつか不可思議な点があった。



その一つが、屋敷の奥の“お姫さま”である。



メイさまというらしい“お姫さま”は、彼女が屋敷に来たときからいた。

どうやら外国からルイと共に日本来たらしい。

彼女のために家庭教師や衣装係などの贅を尽くす主は、部屋に一切使用人を寄せ付けさせなかった。

掃除や食事の管理などを全部請け負い、なるべく姿を見させぬようにしていた。


メイドたちが彼女にすることは、食事の管理に洗濯、それに“内線の際の対応”を頭に入れることだけ。

内線はこの屋敷にあの部屋しかない。

全部の部屋にあるのにも関わらず、だ。

すなわち、内線がかかる=“お姫さま”の危機。


『メイから内線がかかったら、睡眠薬を飲ませる』


たった、それだけの対応を。

ルイは毎日のように使用人に言い聞かせている。